2010年1月4日月曜日

カール・シュミット『政治的なものの概念』(未来社、1970.12、田中浩/原田武雄訳)

■『政治的なものの概念』は、ワイマール共和制下における議会主義および複数政党制が招いた政治的・社会的混乱と不統一に対する処方箋を提示すべく書かれた。ここでシュミットが企てたのは、端的に言えば混乱する<社会>に対する安定した<国家>の復権である。シュミットは「政治的なもの」の識別基準を「友か敵か」に求める。社会に存する様々な対立は「友」と「敵」による対立へと還元可能であり、「友」は相手を「敵」と看做すことで自らの結束を強めつつ、「敵」の存在論的な殲滅を志向するのだという。

<政治的思考および政治的本能は、理論的にも実際的にも、友・敵を区別する能力によって実証される。重大な政治のクライマックスは同時に、敵が具体的な明瞭さで敵として認識される時点なのである。/これは逆にもいえる。すなわち、国際政治・国内政治の区別なく、政治史上いたるところにおいて、この〔友・敵の〕区別をなしえず、ないしはなしたがらないことが、政治的終末の徴候としてあらわれる。>[84-86]
 
■シュミットによれば、このような「政治的なもの」=「友・敵」の対立の帰結として典型的なのが戦争であるとされる。そしてそのような<例外状態>を収束させるべく「決断」を下すのが、「主権者」としての「国家」に他ならない。