2010年1月10日日曜日

東京大学教養学部中国語部会編『中国語購読教材・園地』


■最近、理由があって中国語の読解をトレーニングする必要があった。その際に使用したのが本テキストである。数年前まで、実際に東京大学の教養課程の学生(主に2年生)により使用されていたもののようだ。(現在は『行人』という改訂版が使われている。)

■中国語はドイツ語やフランス語に比し、単語の暗記と文法の理解は格段に容易である。だが問題は発音であり、発声・聞き取りともに習得するには相当の時間をかけてレッスンを受けなければならない。ピンインというアルファベット表記を用いてその発音法を示すのが現在は一般的だ。ただ、中国人とコミュニケーションをしたり、中国語検定を受けるのでない限り、発音を完璧にマスターする必要はない。

■僕の場合、発音の練習をする必要が無く、中国語の文献を読めさえすれば良かったので、本書を用いて単語力及び読解力の強化に務めた。全くの初心者であったが、約三ヶ月ほどで全訳を完成させることが出来た。

■収録されたテクストの題材は、李登輝の講演から、中国版ショートショート、高行健と楊煉の対話まで、非常にヴァリエーションに富んだものとなっている。詳細な語注や文法上の解説も付されているので、本書を一冊こなせば、「中華日報」の記事はおろか、中国語の研究論文にもなんとか取り組めるだけの実力が付く。

■ただ注意してほしいのは、本書では、テクストの題材それ自体としての刺激性を求めるあまり、特殊な語彙や構文が多用されているという点だ。よって、本書から単語を抜き出して単語帳を作成しても、基本的な単語力が身につかないままとなってしまう可能性がある。

■よって、まずは基本的なドリル(『トレーニングペーパー中国語/単語』NewtonPressがオススメ)をこなして、最低限の語彙および構文力を身につけてから臨むのがよいと思う。